「父さん、一緒に呑もうよ」と言いたくて買ったアサヒビール

昔から、父さんは仕事から帰ってくるとアサヒビールを飲んでいた。

次の日が仕事の時は缶で、
次の日が休日であれば瓶というのがお決まりだった。

よく俺に「お前が大きくなったら一緒に呑むか」と、
笑顔で俺に話しているのがよく覚えている父さんの表情のひとつだ。

高校卒業後、そのまま都会の大学へ行き、
楽しさあまりにろくに地元にも帰らずにそのまま就職した俺は、
父さんとまだ呑むことはなかった。

勤めてみて最初の数日で、
大学のころにはなかったホームシックになった俺は、
ふと父さんの「一緒に呑むか」の言葉を思い出した。

初任給を貰った俺は、迷わずにそのお金でアサヒビールを買って、
休日に新幹線に乗り実家へと向かった。

数年前に比べると白髪の増えてきた父さんに「父さん、一緒に呑もうよ」とアサヒビールを渡すと、
目をきょとんとさせた後に「何年待たせるんだ」と文句を言いながらも座るように促す。

新幹線の中で温くなったアサヒビールを、
父さんは「今までで一番うまいビールだな」と言いながら呑んでいた。

先日、俺も父親になったが、
いつかこの子と呑む日が来るのだろうか?
そのときは、アサヒビールを飲んでいるような気がする。